肝臓
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遠隔成績から見た肝癌に対する系統的亜区域切除の意義の検討
山崎 晋長谷川 博幕内 雅敏高山 利忠
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1990 年 31 巻 5 号 p. 558-564

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抄録

障害肝に合併した肝癌切除の際,肝障害の存在と肝癌の経門脈性進展を考慮して,術中超音波検査を利用した系統的亜区域切除を開発し実施してきた.肝切除症例をA:非系統的部分切除群(n=179), B:系統的亜区域切除群(n=117), C: 1区域以上の系統的切除群(n=127)の3群にわけ,その背景因子と術後生存率とを比較した.A, B群を比べると,癌の進展程度には殆ど差がなく,肝機能の点ではA群に肝機能の高度障害例が多かった(p<0.01)が,2群の術後5年生存率はA群45.1%, B群48.3%と有意差は無かった.1)小範囲切除の対象になるような小型肝癌でさえも潜在的肝内遠隔転移は亜区域を越えていることが多い,2)肝硬変例での多中心性多発の存在,3)再発後の治療効果の如何,などの要因が切除術の系統的か否かより強い予後因子として示唆された.術後生存率のみならず術後再発率での検討を要すると思われた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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