2020 年 91 巻 3 号 p. 267-274
温室効果ガス(GHG)排出に対する削減方策の1つとして,家畜からのGHG排出を低減させる飼料(アミノ酸バランス改善飼料を想定しており,以下,「環境にやさしい飼料」とする)に対する関心が高まっている.このような特性をもつ飼料に対し農家がどのような選好を示すかを評価するため,酪農家29戸,養豚農家30戸を対象に計量経済学的手法である離散型選択実験を行った.「環境にやさしい飼料」に対し,「生産量」,「GHG削減量」,「生産物の質」,「食いつきの良さ」,「飼料価格」の5属性を設定した選択セットを作成し農家に提示した.その結果,両農家とも「生産量」や「生産物の質」など収入に直結する属性に対し大きな選好の値を示し,「GHG削減量」に対しても正の選好を示した.また酪農家は「生産物の質」より「生産量」に対し大きな選好を示したが,養豚農家は「生産量」と「生産物の質」の両方に対し同等に大きな選好の値を示した.