日本畜産学会報
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豚革製造における毛を回収する脱毛法の改善
砂原 正明宝山 大喜岡村 浩
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1994 年 65 巻 3 号 p. 284-288

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抄録

皮革工場から排出される排水中の総汚濁負荷量の削減を目的に,いわゆる免疫現象(immu- nization)を利用して毛に安定性,抵抗性を付与してから脱毛する方法の豚革製造への適用を検討した. この脱毛法はSIROLIME脱毛法を元にし,次の4段階から成る.第1段階で氷硫化ナトリウムを原皮 に浸透させ,第2段階で毛の表面に付着する水硫化ナトリウムを次亜塩素酸塩で酸化•除去し毛を保護 する.第3段階で水酸化カルシウムを加え皮中の水硫化ナトリウムを活性化し毛根を緩ませ,毛に免疫 性を付与させる.第4段階で硫化ナトリウムと水酸化カルシウムにより脱毛して毛を回収する.ミキ サー型ドラムで200枚の塩蔵豚皮を処理し,ロータリ一スクリーニングマシンで毛を回収した.その結 果は以下の通りである.1) アルカリにより免疫性を付与された毛は繊維状の形態を保ち効率よく回収さ れた.その重量は原皮重量に対して約5%となった.得られた革には残毛は全く見られなかった.脱毛 工程の浴量は原皮重量に対して200%,ドラム回転数は2r.p.m.が適当であった.2) 準備作業における 各工程の排液を分析し,汚濁負荷量を水漬けから脱灰前の水洗工程までの間で通常法と比較すると,本 法ではBODが約34%,CODが約34%,SSが約29%,油分が約21%,全蒸発残留物が約14%削減さ れた.3) 本法で得られたウェットブルー•製品革の一般化学分析,製品革の機械的性質の測定および外 観の官能検査の結果は,一般に市販されている豚衣料用スエードと比べ大きな差はなかった.以上の結 果から,本税毛法は豚革製造に応用でき,皮革工場排水中の汚濁負荷量の削減に大きく役立つことを認 めた.

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