日本畜産学会報
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牛乳カゼインの酵素分解による低アレルゲン化ペプチドの開発
中村 哲郎宿野部 幸孝桜井 稔夫井戸田 正村田 信弥
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1991 年 62 巻 7 号 p. 683-691

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抄録

牛乳カゼインを酵素により分解し,アレルゲン性の低下したペプチドを得ることを目的として,検討を行なった.カゼインの酵素分解物は,Aspergillus oryzae, Rhizopus sp.およびBacillus sp.由来の3種類のプロテアーゼを組み合せて実施した.得られた分解物中の遊離アミノ酸含量は約31%で,分解率は50%であった.また,分子量はほとんどが1,700以下であった.この分解物の抗原性について,モルモットーモルモット系の受身皮膚アナフィラキシー反応(PCA反応)を実施したところ,カゼイン分解物とカゼインは交差抗原性を持たず,カゼイン分解物には抗原性がないか,あっても非常に弱いものと判断された.また,ELISA抑制試験の結果から,分解物は未分解のカゼインに比べて,抗原性が1/10,000以下に低下していることが示された.
酵素反応は苦味を生じないような条件下で行なったことから,得られたペプチドは牛乳アレルギー乳児治療用乳を含む,数多くの低アレルギー用食品の開発に広く利用できるものと思われる.

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