日本畜産学会報
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山羊卵巣のグルコース6リン酸脱水素酵素活性
宮本 元石橋 武彦内海 恭三
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1980 年 51 巻 8 号 p. 582-587

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抄録

グルコース6リン酸脱水素酵素(G-6-PDH)は,ペントースリン酸回路の重要な位置をしめ,グルコース6リン酸の6ホスホグルコノラクトン酸への転換に関与し,6ボスホグルコン酸脱水素酵素とともにNADPHを生産する.この経路によって生産されるNADPHは,ステロイドの水酸化に役割を果たしている.本実験は,山羊卵巣中のG-6-PDH活性を,組織化学的に明らかにするために行った.発情開始日を0日とし,第5日の非妊娠および妊娠トカラ山羊の卵巣を採取した.クリオスタットで10μmの切片を作製し, NACHLAS et al.の方法に準じてG-6-PDHを検出した.得られた成績はつぎのとおりである.(1) G-6-PDHの分布と活性の強さに関して,非妊娠山羊と妊娠初期山羊の卵巣の間には差は認められなかった.(2) 卵胞腔成前の正常な卵胞では,顆粒膜細胞は中等度,卵胞膜は非常に弱い酵素活性を示した,正常な胞状卵胞では,顆粒膜細胞は強い酵素活性を示し,卵胞膜内層は非常に強く,外層は弱い活性を示した.なお,閉鎖卵胞の酵素活性は,正常卵胞に比べて弱かった.(3) 発情黄体および妊娠初期黄体には,いずれも非常に強い酵素活性が認められた.(4) 卵巣基質には非常に弱い酵素活性が,胚上皮には弱い活性が認められた.山羊卵巣において,G-6-PDHの強い活性を示した正常な胞状卵胞の顆粒膜細胞と卵胞膜内層,および黄体は,ステロイドの合成に関与し,一方,活性の弱い閉鎖卵胞,卵巣基質および胚上皮は,ステロイドの合成にほとんど関与していないと思われる.

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