日本畜産学会報
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泌乳ハムスターの尿素態15N利用性に及ぼすGenistinの影響
坂口 英堀口 雅昭松本 達郎
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1978 年 49 巻 9 号 p. 653-658

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抄録

牧草中のエストロジェン様物質(ES)の一つであるgenistinが,泌乳ハムスターにおける尿素態窒素の利用性に及ぼす影響を15N-尿素を用いて検討した.試験区へのgenistinの投与量は飼料1g当たり10mgとし,哺乳中のハムスターに分娩後2日目から尿素1%配合飼料,6日目からは15N-尿素1%配合飼料を用いた.飼料は制限給餌によって,対照区と試験区の摂食量が揃うように与えた.分娩後10日目に母親および乳子を屠殺し,各臓器および屠体の15N濃度と,消化管内容物のアミノ酸画分の15N濃度を分光分析法で測定した.母親の肝臓,腎臓,乳腺,屠体,および乳子の屠体,ならびに母親の糞のトリクロル酢酸(TCA)不溶画分の15N濃度(15N atom % excess)と15N含量は,genistinの投与によって増加し,摂取15N量に対する乳子屠体の15N含量の割合は有意に高くなった.また,母親の胃内容物,盲腸内容物,血漿および乳子胃内容物のリジン,アルギニン,ヒスチジン画分およびフェニルアラニン,チロシン画分への15Nの取り込みが確認され,genistinの投与によってその濃度が増加する傾向がみられた.これらの結果から,genistinの投与による泌乳ハムスターにおける尿素態窒素の利用性の向上には,消化管内微生物の体蛋白質合成量の増加が関与しており,尿素態窒素由来の微生物体蛋白質の一部が消化吸収されて,乳汁蛋白質合成に利用されるものと推論された.さきに著者ら1,2)は,牧草中のエストロジェン様物質

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