1993 年 61 巻 4 号 p. 821-826
東北•北海道地方における8市町村の'盛岡16号'からイチゴ黒斑病菌を分離し, 各地の菌株の特徴と宿主範囲を調査するとともに, それらの菌株に対して'盛岡16号'の体細胞変異系統, 'M16-AR1', 'Ml6-AR2'および'M16, AR3'が抵抗性を示すかどうかについて検討した.
1.供試した8菌株は, 菌糸の伸長や色などに多少違いがみられたが, 分生胞子の形や大きさなどに差異は認められなかった.
2.8菌株の宿主範囲については, 接種した6作物の15品種のうちイチゴの'盛岡16号'と'Robinson'ならびにニホンナシの'二十世紀'と'新水'に病原性を示したこどかち, いずれの菌株も従来わが国で報告されているイチゴ黒斑病菌の宿主範囲と一致した.
3.'M16•AR1', 'M16•AR2'および'M16-AR3'の各系統は, 上述の8菌株に対して抵抗性を示したこと, さらに3か年間圃場においても発病しなかったことから, 各系統とも'盛岡16号, にかわる寒冷地のイチゴ黒斑病抵抗性品種として利用できる可能性が高いものと推察された.
謝辞本研究を行うにあたり, 青森県畑作園芸試験場技師岩瀬利己および及川健の両氏にはイチゴ黒斑病菌の菌株 (90-12) を分譲していただいた. また, 本学助教授 古屋廣光博士には貴重なご助言を賜った. 各氏に記してお礼申し上げます.