園芸学会雑誌
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カキ'西村早生'樹の生長, 養分吸収, 水分ストレスおよび根の呼吸活性に及ぼす新梢伸長初期の環状はく皮の影響
文室 政彦
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1998 年 67 巻 2 号 p. 219-227

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抄録

密植栽培の6∿9年生'西村早生'を供試して, 新梢伸長初期の主幹部の環状はく皮が樹の生長および根の生理機能に及ぼす影響を検討した.5月初旬(雌花満開22日前)に, 地上より10cm上の主幹部に1 cm幅で環状はく皮処理を行ったところ, 新梢生長および幹の肥大が顕著に抑制され, 着葉数が減少した.処理翌年も新梢生長が抑制された.収量および果実品質は処理当年および翌年とも処理による影響が少なかった.4月下旬(雌花満開34日前)または5月初旬(雌花満開23日前)に環状はく皮処理を行ったところ, 処理時期が早いほど新梢生長および幹の肥大が抑制された.また, 処理により着葉数は減少し, 個葉の生長が抑制された.処理により細根の酸素吸収速度は低下し, 木部樹液中の硝酸態窒素およびカリウム濃度が低下し, 新梢内窒素, カリウムおよびマグネシウム含有率は減少した.枝および葉の水ポテンシャルは処理による影響が少なかった.以上の結果, 新梢伸長初期の主幹部の環状はく皮はカキのわい化密植栽培において, わい化の手段として有効であることが実証された.樹の生長抑制の原因としては, 新梢ならびに個葉の生長が抑制され, 葉量が減少した結果, 葉の乾物生産量が減少したこと, 根の生理機能が低下したことが関与するものと考えられた.

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