園芸学会雑誌
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ウンシュウミカンの樹上完熟栽培と普通栽培ならびに銘柄産地の果実品質の比較
竹林 晃男片岡 丈彦行永 寿二郎
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1992 年 61 巻 1 号 p. 39-47

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抄録

早生ウンシュウミカンは, 経済上の見地から11月中に収穫を終るのが普通であるが, さらに, 樹上に残して品質を向上させる場合があり, このような果実を"樹上完熟果"と呼んでいる.
1.2月まで樹上に着果させた樹上完熟栽培のウンシュウミカン'宮川早生'果実を水田転換園栽培の果実および同貯蔵果, 無加温ビニルハウス栽培の果実と比較し特徴を明らかにした. さらに, 和歌山県有田地方の評価の高い銘柄産地3か所と一般栽培園1か所で栽培した'向山温州'について比較検討した.
'宮川早生'の全糖含量は樹上完熟果実およびハウス果実が水田転換園の果実や同貯蔵果より高く, '向山温州'では銘柄産地の果実が一般栽培園の果実より高かった. 糖組成ではショ糖が主体で果糖, ブドウ糖がそれに次ぎ, 全糖含量が多いほど果糖の比率が高い傾向がみられた. 樹上完熟果実およびハウス果実は銘柄産地の糖組成に近かった. 滴定酸量は樹上完熟果実, ハウス果実および一部の銘柄産地の果実で多く, 貯蔵果で少なかった.
食味検査で高い評価を得た銘柄産地の'向山温州'はアミノ酸総含量が高かった. 一方, '宮川早生'ではハウス果実のアミノ酸総含量が最も高かったが, 樹上完熟果実では低かった.
2.異なる果樹園での'宮川早生'の樹上完熟栽培では全糖含量が収穫時まで増加し, 11月での差はそのまま2月まで維持された. 上枝成りの大果より下枝成りの小果の全糖含量が多く (11月), さらにその後の蓄積量も多かった. 袋かけにより種々の障害が防止されたが,2重紙袋は全糖含量の低下をもたらした.
3.樹上完熟栽培は甘味と酸味が強く, 銘柄産地の品質に近い果実を容易に生産できる-方法であると位置づけられた.

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