2020 年 57 巻 12 号 p. 1197-1203
目的:結帯動作には2種類の動作方法が存在する.移動させる上肢と同側の肩甲骨付近を触れる外転方法と,対側の肩甲骨付近を触れる内転方法である.本研究は,各方法時の肩甲骨運動と筋活動を知ることを目的とした.
方法:健常男性10名に外転方法と内転方法を行わせた.肩甲骨上方回旋・前傾・内旋角度を三次元動作解析装置で計測し,多重比較法で比較した.僧帽筋上部線維・中部線維・下部線維,前鋸筋の筋活動を表面筋電計で計測し,分析した.
結果:外転方法は肩甲骨が前傾・上方回旋した.内転方法は下垂~L5・T12で肩甲骨が前傾・上方回旋し,L5・T12より高位で下方回旋した.僧帽筋上部線維の筋活動は,外転方法では下垂~T7で常に増大したが,内転方法ではT12より高位で減弱した.
結論:内転方法の獲得には,肩甲骨の前傾や下方回旋,僧帽筋上部線維の筋活動に着目したリハビリテーション治療が重要となる.