労働安全衛生研究
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調査報告
社会福祉施設における動作の反動,無理な動作および転倒による労働災害の分析
-提供するサービスの違いに焦点を当てた標本調査-
平内 和樹 菅間 敦島田 行恭
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2023 年 16 巻 1 号 p. 51-64

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抄録

2019年の社会福祉施設における労働災害の発生件数は,2017年の同発生件数と比較して15%増加している.厚生労働省は第13次労働災害防止計画を策定し,近年増加傾向にある社会福祉施設の労働災害を減少させるために各種の取り組みを行っている.本研究では,厚生労働省から提供された労働者死傷病報告を用いて,社会福祉施設で発生した「動作の反動,無理な動作」および「転倒」に関連する労働災害の傾向を調査する.また,社会福祉施設が提供するサービスの内容に応じた系統に分類し,各サービス系統による労働災害発生傾向に違いがあるのかを調査する.単純無作為の標本調査に基づき,労働者死傷病報告から年齢,経験年数,作業の状況,事故の原因などの労働災害の特徴となる項目を抽出した.その結果, (1)高年齢かつ非熟練労働者での労働災害占有率が高いこと,(2)動作の反動による労働災害は,ほとんどが腰部の負傷であり,単独での移乗作業で発生していること,(3)転倒による労働災害は,濡れた面での滑りや障害物でのつまずきにより多く発生していること,(4)発生する事故の種類,作業の状況,事故の原因などの傾向はサービス系統によって異なることを示した.

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© 2022 独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
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