2020 年 13 巻 1 号 p. 65-78
自治体職場を対象に参加型アプローチを用いてOSHMS を導入・運用し,その状況について17 年間観察を行い,リスクアセスメントの確実な実施などによるOSHMS の導入・定着が労働災害発生率へ及ぼす影響を評価した.今回対象とした自治体職場で,OSHMS の導入段階を「導入前(2002~2006 年)」,「導入期(2007~2011 年)」,安全衛生活動評価表の評価軸のすべての達成度合いが90%を超えた「定着期(2012~2018 年)」に分けて,労働災害の年千人率の推移を比較した.その結果,現業職場と比較して非現業職場ではOSHMS の導入・定着による労働災害の減少は認めなかった.一方,現業職場の労働災害の年千人率は,OSHMS の導入前に比べ,「定着期(2012~2018 年)」が有意(p<0.01)に低かった.また同時期の現業職場の年千人率は,全国の自治体のそれを有意(p<0.01)に下回っていたことも確認された.これらの結果から,OSHMS の導入・定着による現業職場における労働災害の抑制効果が示唆された.