肺癌
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総説
EGFR肺癌の基礎的理解と臨床
安田 浩之
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 61 巻 7 号 p. 911-918

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抄録

2004年に複数のグループから,上皮細胞増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)遺伝子変異とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR tyrosine kinase inhibitor:EGFR-TKI)の感受性の関連が報告された.それ以降,EGFR-TKIの開発と臨床試験での有効性の検証を経てEGFR遺伝子変異陽性肺癌患者の予後は急速に改善した.このため,臨床現場では,EGFR肺癌は「解決された課題」のようにとらえられることがあるが,依然としてEGFR遺伝子変異陽性肺癌患者の多くは肺癌の進行によって死亡しており,初期耐性,獲得耐性の問題など克服すべき課題は多く残されている.今後EGFR遺伝子陽性肺癌患者の予後を改善するには,さらなるEGFR肺癌の生物学的理解が必須である.EGFRはチロシンキナーゼという酵素であり,この酵素活性の亢進が発癌に関わっている.EGFR遺伝子変異陽性肺癌の本質的理解を深めるには,酵素としてのEGFRと遺伝子変異の関係を理解することが重要である.本稿では,EGFR遺伝子変異陽性肺癌の基礎的理解を深めるため,酵素としてのEGFRに注目し,報告されているEGFRの活性化機序,薬剤感受性決定機序などを概説する.また,これら基礎的知見を踏まえた上で臨床応用に関わる知見を,自験例を含めて解説したい.

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© 2021 日本肺癌学会
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