肺癌
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原著
胸腺癌における上皮間葉移行の臨床病理学的意義に関する解析
新谷 康舟木 壮一郎川村 知裕大瀬 尚子神崎 隆南 正人森井 英一奥村 明之進
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2017 年 57 巻 6 号 p. 746-751

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抄録

目的.上皮間葉移行(EMT)とは,上皮細胞が間葉系形質を獲得する現象であり,癌細胞の浸潤・転移に関与している.今回,胸腺癌におけるEMTの臨床病理学的意義を明らかにするために,E-cadherin,N-cadherin発現を解析した.対象と方法.当院で切除された胸腺癌31例を対象とし,臨床病理学的,免疫組織化学的に検討した.結果.原発巣切除を含む胸腺摘出術と浸潤臓器の合併切除を行い,26例で完全切除が行われた.術後病理では,扁平上皮癌25例,低分化癌4例,その他2例であり,正岡I期1例,II期1例,III期20例,IV期9例であった.E-cadherin発現低下またはN-cadherin発現上昇により,腫瘍内にEMTありと診断した症例は15例であった.全患者の5年生存率は86%で,EMTを認めた症例では63%であり,EMTを認めない症例の100%に比して有意に予後不良であった.また,完全切除例のうち6例で再発を認め,EMTを認めた症例で有意に無再発生存率が低かった.結論.EMTマーカーであるカドヘリン発現が胸腺悪性度の指標となる可能性が示唆された.

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© 2017 日本肺癌学会
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