肺癌
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総説
高齢者非小細胞肺癌の治療の現状と展望
山口 正史
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 57 巻 6 号 p. 739-745

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抄録

近年の急速な医療の進歩を含む社会情勢の変化により世界的な高齢化社会を迎え,この状況の中で死亡原因に占める悪性腫瘍の割合は年々増加している.悪性腫瘍の中でも肺癌は本邦においては男性で1位,女性では2位を占め,その多くを高齢者が占めることは治療選択においての重要な問題の1つである.一般に高齢者の多くは糖尿病,虚血性心疾患や呼吸器疾患に代表される身体機能の低下につながる併存症の存在に加え,認知機能の低下を伴う場合もあり,個々の年齢のみならず併存症などが影響する全身状態が治療選択の決断に影響することは論を待たない.治療法の選択においては年齢によらず本人の人生観や社会観が反映されるべきであるが,特に高齢者においてはその治療により当該年齢からの予測平均寿命に対し十分な予後が期待されるか,同時にQuality of Life(QOL)に代表される生活の質にかかる事項が担保されるか否かが,治療方針決定の際には重要となる.本稿においては高齢者の非小細胞肺癌について臨床病期I~II期における外科治療,III期の局所進行症例に対する化学放射線療法,さらにIV期症例に対する化学療法それぞれについて,現状と課題を検討したい.

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© 2017 日本肺癌学会
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