2015 年 46 巻 2 号 p. 32-39
EUの直接支払制度において,平坦地域と条件不利地域における所得格差を是正し,水質保全や生物多様性の保護をはじめとした環境保全要件の強化を特徴とする一連の制度改革が進められてきた.EUの農業経営は直接支払いなくしては存立しえず,農業経営にとって,環境保全要件への適応は不可避である.他方,環境政策は環境保全の成果を達成することが目的である.部分的な営農技術の普及や営農行為の定着にとどまらず,生産者が固有の営農環境に適応できる知の移転の仕組みが模索され始めた.