2003 年 9 巻 p. 5-21
グローバリゼーションが進行するなかで,私たちの暮らしは大きな変貌をとげつつある。なかでも食・農・環境をめぐる動きについて,循環型社会の形成という視点から考察する。たとえば有機農業における産直・提携運動では,食べ物の安全性にとどまらない自然生態系の大切さ,農業生産の問題点,反自然化してきた都市生活(消費者)のライフスタイルの変革が展開した。こうした動きは,近年のエコロジー運動や生活の見直し,循環の再構築を目指すさまざまな活動にもみられる。食と農に関わる生産と消費の適正化および循環型社会の形成の動きは,ひろく大量生産・消費社会からの脱却の道を示唆するものである。大地・自然と人間との関係をどのように結び直すのか,私たちは大きな時代的転換期に位置している。