NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
初診時に切迫ヘルニア状態を呈した慢性硬膜下血腫の検討
松本 洋明櫻井 靖男花山 寛朗岡田 崇志南 浩昭増田 敦富永 正吾宮地 勝弥山浦 生也吉田 泰久吉田 耕造
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2018 年 23 巻 1 号 p. 32-38

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抄録

 慢性硬膜下血腫に重度の意識障害や瞳孔異常といった脳ヘルニア兆候を呈することは稀である.そこで我々は2010年1月から2015年10月まで当院で手術療法を行った初回慢性硬膜下血腫492例のうち,初診時に切迫ヘルニア状態を呈した患者の臨床的検討を行った.492症例中11症例(2.2%)に初診時に脳ヘルニア兆候を認めた.脳ヘルニア兆候を呈した群と呈さなかった群との比較では,ヘルニア兆候を呈した群で統計学的有意差をもって,高齢,他疾患で他院入院中の患者が多く認められた.多変量回帰解析でも他疾患で他院入院中であることが唯一の独立した危険因子であった.緊急手術を行ったにもかかわらず,11症例中6症例で脳ヘルニアが完成した.脳ヘルニアが完成した群と回避できた群での比較検討では,統計学的有意差をもって頭部外傷歴が明白,CTで迂回槽の描出が不良であった.予後に関しては脳ヘルニアの完成の有無にかかわらず,初診時に脳ヘルニア兆候を呈すると予後は不良であった.今回の検討では,切迫ヘルニア状態の症例が他疾患で入院中に発見されている症例が多かったことから,高齢者で最近の頭部打撲の既往がある場合は慢性硬膜下血腫の発生を念頭に置くことを他科医師にも啓蒙する必要があると思われた.

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© 2018 日本脳神経外科救急学会
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