2003 年 43 巻 3 号 p. 127-138
野生動植物の過度の商取引により,地球上の様々な野生動植物が絶滅の危機に瀕している.高知県は野生ランの宝庫と呼ばれるが,近年園芸利用を目的とした乱獲により,絶滅した種及び絶滅の危機に瀕した種が数多くある.そこで,本研究では,野生動植物(主にラン科植物)の保全や環境教育の在り方についての指針を得るため,高知県下の学生(高知大学,高知女子大学,放送大学,高知県立農業高校)に対し野生動植物保全についての意識やワシントン条約の認知についてアンケート調査を行った.高知県下の学生は,ランに対して高価なイメージが強く,そのためかランを購入する人の割合が少なかった.絶滅の危機に瀕する野生ラン科植物を保護するべきであるとする学生は多数を占めたが,組織培養等による植え戻しについては,良いとよく分からないで意見が分かれた.そして野生動植物保全に関する教育をほとんど受けていない等の影響から,野生植物の保全やワシントン条約についての関心や知識が薄いことも伺えたが,大学・学校等において,テレビを中心としたマスメディアや,身近な環境の野生生物種を通した,野生動植物保全教育に努めれば,野生動植物に対する保全意識が芽生えるものと思われた.