2008 年 59 巻 6 号 p. 539-544
遠隔臓器転移を有する食道癌に対してFAP療法(5-FU+doxorubicin+CDDP)による初回治療を2002年から2007年に36例施行し,安全性,有効性についてretrospectiveに検討した。対象は男性33例,女性3例,年齢中央値は64歳(47~78歳),全例扁平上皮癌,転移臓器は肝23例,肺8例,骨5例,胃3例,副腎2例(重複あり)であった。平均治療回数は2.72回(1~8回),全体の奏効率(総合効果)は47.2%,部位別では食道原発巣45.7%,リンパ節32.3%,肝47.8%,肺37.5%であった。50%生存期間は335日(50~1593日)であり,1年生存率は45.1%であった。血液毒性は好中球減少が多く,Grade 3を7例,Grade 4を2例に認めた。その他の有害事象は倦怠感26例(72.2%),消化器症状(食欲不振,口内炎)21例(58.3%)が主であった。FAP療法は食道原発巣,肝転移巣に対する有効性が高く,切除不能症例に対して期待の持てる治療である。