大阪物療大学紀要
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Dual-energy CT による組織成分抽出の基礎研究
Spectral factor 分解の精度向上へ向けて
岩元 新一郎山口 功
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2015 年 3 巻 p. 1-10

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抄録

重荷電粒子治療では、治療計画に必要な人体組織の質量阻止能を決定するために、 X 線 CT による組織パラメータ(実効原子番号と電子密度)の推定が不可欠である。近年の dual-energy CT の実用化により、高精度の組織パラメータ抽出技術の確立に放射線治療分野は期待を寄せている。Brooks らは 1977 年に spectral factor と呼ばれる線質係数を用いた巧妙な組織パラメータ抽出法(spectral factor decompositoin, SFD)を提唱している。しかし、1983 年の Jackson らによるエネルギー依存性の問題点が明らかになって以来、SFD による組織パラメータ推定に関する報告はない。本研究では、Brooks らの提唱する SFD の簡便性と実用性に着目し、SFD のコンピュータシミュレーション実験を行い、組織パラメータの異なる種々の人体模擬組織に対する SFD 推定誤差の程度を調査した。実験結果から、エネルギー依存性に起因する推定誤差は、実効原子番号 10 以上の人体組織に対して、電子密度が 4.5%以上、実効原子番号が 2.5%以上であることが確認できた。しかし、spectral factor のキャリブレーション値に伴うビームハードニングの影響が、SFD のエネルギー依存性に起因する推定誤差をキャンセルすることで、電子密度の推定誤差が Lung を除き±0.5%以下、実効原子番号の推定誤差が、Lung と Adipose を除き±2%以下と非常に精度のよい推定が可能であることが明らかになった。

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