地域地理研究
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グローバル経済下におけるキャットフィッシュ 加工・輸出企業の経営戦略
―ベトナム南部カントー省を事例に―
The Hung NGUYEN本田 恭子金 枓哲
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 26 巻 2 号 p. 1-22

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抄録

本研究では、グローバルな市場競争下におけるベトナム社会主義共和国(以下、ベトナム)のキャットフィッシュの加工・輸出企業の経営戦略を明らかにした。キャットフィッシュ産業が輸出を本格化させた2000年以降、加工・輸出企業はアメリカ合衆国(以下、米国)によるダンピング税の課税、養殖業者と加工企業間の需給の不均衡、食品安全に関する認証基準の強化という3つの課題に直面してきた。ベトナム南部カントー省内の加工・輸出企業16社への聞き取り調査によると、企業は自社養殖池の確保、認証の取得、輸出市場の転換と開拓、輸出に向けての企業間連携といった4つの方法で上記の3つの課題に対応していることが明らかとなった。また、これらの企業の対応を事業規模別に比較した結果、事業規模が大きい企業ほど安定的に原料を調達し、市場のニーズに応えた高価格な商品を安定的に輸出しているのに対し、事業規模の小さい企業は原料調達に不安要素を抱え、市場のニーズに応えることができず、不安定な条件での輸出を強いられており、企業の二極化が進んでいることも明らかとなった。一般的に、規模の小さい企業では商品の差別化による高付加価値化が市場戦略となりやすいが、キャットフィッシュ産業においては高価格で販売可能な輸出市場の参入障壁が高いためにこれを採用することができず、企業間の連携が強化されている。ベトナムのキャットフィッシュ加工・輸出企業は、上記の3つの課題への対応を通じてグローバル市場における諸問題への解決能力を高めてきており、今後も大きな成長が見込まれる。ただし、輸出市場の多角化やグローバルな認証基準への対応を通じて、加工・輸出企業の階層分化が一層進むことも予想される。

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