日本先天異常学会会報
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妊娠マウスに皮下投与されたLinear Alkylbenzene Sulfonate (LAS)の胎仔の発生および生後発育におよぼす影響
桝田 文八井上 邦夫
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1974 年 14 巻 4 号 p. 309-318

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抄録

直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)の0。4、2、10および50mg/kgをICR-JCL系マウスに妊娠7日から13日にいたる7日間、毎日1回連続皮下投与し、その妊娠末期の胎仔ならびに自然分娩後の新生仔を観察しつぎの結果を得た。1)マウス妊娠母体の一般状態、妊娠の維持、分娩後の状態および母体体重に対するLAS投与の影響はみられなかった。母体臓器においては、50mg/kg投与群の肝臓、脾臓および腎臓、10mgと0。4mg/kg投与群の腎臓に重量増加がみられたが、明瞭な用量反応相関はみられず、病理学的所見にも異常はなかった。2)末期胎仔の観察では、LAS投与による胚致死作用、発育抑伽作用はみられず、外形および内形奇形において、対照群とLAS投与群との間に差異はみとめられなかった。骨格観察では2mg/kg群に距骨、10mg/kg群に距骨と踵骨の化骨遅延がみられ、変異では10mg/kg群に第1または第2頸椎弓分岐、O。4、2および10mg/kg群に第14肋骨の出現頻度が高かったが、奇形は各群とも成立しなかった。3)新生仔については、分娩仔数が対照群に比べO。4、2および10mg/kg群で減少していたが、これらの投与群では逆に体重がより増加していた。新生仔の臓器重最でも多少の変動がみられたが用量反応相関はなく、病理組織所見でも異常はなかった。哺育率にもとくに差異はなく、また新生仔の生後分化ならびに一般行動、感覚および運動機能や外形、内形および骨格にも異常はみとめられなかった。以上のように、マウスヘのLAS皮下投与により、催奇形性や胎仔ならびに新生仔に悪影響をおよぼす決定的な証拠となるものをみとめることができなかった。

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© 1974 日本先天異常学会
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