社会政策
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Print ISSN : 1883-1850
特集■社会的投資戦略と教育
近現代日本の国家・社会と教育の機能
森 直人
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2020 年 12 巻 1 号 p. 12-26

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抄録

 本稿は,19世紀末の日本における学校を基軸とした教育システムの確立から,貧困や社会的排除に抗する政策とも連動して生じつつある現在の公教育再編の動向に至るまでの歴史的展開について,教育の社会的機能に着目する観点から俯瞰する。欧州における福祉国家再編の政治のなかで広がった社会的投資という着想は,就学前の教育・ケアや子育て支援,女性や若年無業者・不安定就労者の職業教育・訓練や就労支援など,広義の教育領域に関心を寄せる。他方で,1990年代以降の日本では学校教育の多様化・弾力化をうたう教育改革が進展し,今世紀に入ると「教育供給主体の多元化」まで射程に入れた構想も提出された。それは従来型の公教育体系に重大な変更を迫る可能性がある。本稿は「社会的投資戦略と教育」を問う問題設定が日本に位置付く歴史的文脈を把握するため,教育をめぐる国家と社会の関係変容の行方を展望しつつ,論点提示に力点を置いた歴史叙述を試みる。

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© 2020 社会政策学会
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