素粒子論研究
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散逸・揺動核反応理論と核構造理論(大振幅集団運動の微視的理論,研究会報告)
阿部 恭久
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2011 年 119 巻 1 号 p. A81-A89

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抄録

核構造計算結果は、核反応計算へのInputDataである。第一に、超重元素の存否或いは、残留確率を決める、所謂殻補正エネルギーがあるが、系統的且つ信頼度の高い微視的多体理論による予言がない。現在は、独立粒子模型によるものが利用可能である。因みに1MeVの違いは残留断面積に1桁の違いをもたらす。即ち実験時間に10倍の変化をもたらす。さらに、その励起エネルギー或いは温度依存性(所謂殻減衰)についての微視的理論的研究は、ない。現象論的取り扱いのみ利用可能である。一方、核反応解析は、構造計算で得られる物理量に制限を与える。例えば、融合確率は、集団運動に対するエネルギー散逸係数、或いは摩擦係数に大きく影響されるので、実験データとの対比から、摩擦係数に制限がつく。核分裂についても同様で、分裂確率、更には分裂片運動エネルギーは、摩擦係数に制限を与える。重い系の融合・分裂反応、特に超重元素合成を具体例にして、現象論的、半微視的理論による物理係数を用いた研究の到達点を簡潔に説明して、微視的多体理論の今後の研究方向の参考に供したい。

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© 2011 著者
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