質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
2017年和歌山県新宮市長選挙における ある候補者の選挙前後の心理過程
松原 悠
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2024 年 23 巻 Special 号 p. S10-S17

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抄録

本研究は,2017 年の和歌山県新宮市長選挙に立候補したある候補者における,選挙前後の心理過程を明らかにしようとするものである。日本の区市町村長選挙では20 代や30 代の候補者が稀少であるなか,本事例は,同候補者が同選挙の告示日時点で32 歳の若者であった点,さらに,同候補者が同市の出身ではなく大学卒業後に同市に移住したI ターン者であった点において特徴的である。また,本事例においては,本稿の著者が当事者の一人として主に助言者という立場で同選挙に関与したという点でも特徴的である。同候補者への非構造化インタビューならびに選挙当時に作成された資料の分析から,選挙に向けて候補者が数多くの市民とのやりとりを蓄積していくにつれ,当初候補者が抱いていた不安感が解消し自信を獲得するに至ったこと,また,支持拡大のために実施された活動がまちを担う市長になっていくための心理的な準備過程としても重要な機能を果たしていたことがわかった。

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