日本の株式会社は,国際化に対応して英米流の株主利益優先の改革を進めてきたが,従業員の雇用に犠牲が生じるなど,行き過ぎが見られる。日本企業の現状を概観すると,会社法制が実効性を欠いていることもあって問題点も少なくないが,株主軽視というような海外からの批判は事実と異なる。日本企業が内部留保を重視する姿勢は,配当性向に相反するため,短期利益を志向するファンドの目には株主軽視と映ることになるが,事実は日本企業が長期的な成長視点から雇用の安定や株主の利益を重視しているということにほかならない。日本は,行き過ぎた株主利益優先の改革に終止符を打ち,生産共同体的な視点に回帰して株式会社を再設計する必要がある。営利的な企業観の強いアメリカにあって株主主権を批判し企業主体論を主張したアンソニーのモデルを参考に,日本の株式会社の再設計を提唱する。