山口医学
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症例報告
尾状葉原発肝血管筋脂肪腫の1例
河岡 徹深田 武久桑原 太一松隈 聰金子 唯原田 俊夫平木 桜夫福田 進太郎播磨 陽平浦山 直樹久野 興子松崎 祐子佐貫 和俊
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2013 年 62 巻 1 号 p. 21-26

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抄録

症例は41歳女性.検診の腹部超音波検査で尾状葉突起部に突出型,35mm大の肝腫瘤を指摘された.HBs抗原ならびにHCV抗体は陰性であった.経口避妊薬などの内服歴はなかった.腹部CT, MRI,超音波検査で腫瘤全体は早期で強く造影され,後期ではwash outされた.MRIではT1強調で低信号,T2強調で一部やや高信号であった.血管造影でも腫瘍は強く濃染された.PET-CTでは腫瘍に18F-FDGの集積を認めなかった.AFPならびにPIVKA-Ⅱは基準値内であった.肝細胞癌など悪性腫瘍の可能性も完全には否定出来ず,増大傾向を認めた為,診断かつ治療目的で,腹腔鏡補助下肝尾状葉突起部部分切除術を施行した.最終診断は肝血管筋脂肪腫(肝AML),筋腫型であった.術後の経過は良好で,第9病日に軽快退院した.肝AMLの中でも腫瘍内に脂肪成分が殆どない筋腫型の場合,他の疾患との鑑別は困難である.また腫瘍が小さい場合は細小肝癌との区別に苦慮する場合もある.そのため,診断治療目的に腹腔鏡(補助)下肝切除術を行うことは有用と思われる.本症例は腹腔鏡下手術が手技的に難しい尾状葉原発であったが,突起部からの突出型であったため,腹腔鏡補助下で手術を行い,確定診断が得られた.肝尾状葉原発腫瘍であっても,症例を選択すれば,腹腔鏡(補助)下肝部分切除術は可能である.

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© 2013 山口大学医学会
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