西日本皮膚科
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症例
トシリズマブ投与後に皮膚白血球破砕性血管炎がみられた関節リウマチの 2 例
臼井 真菜横山 恵美山﨑 修勝山 隆行香曽我部 幸白藤 宜紀森実 真
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2022 年 84 巻 3 号 p. 202-206

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抄録

症例 1:67 歳,女性。X-23 年関節リウマチ(RA)を発症した。アバタセプトからトシリズマブ(TCZ)へ変更 1 カ月後,四肢体幹に紅色丘疹や膿疱が出現した。生検では表皮内に好中球浸潤,真皮浅層に白血球破砕性血管炎を認めた。プレドニゾロン(PSL)3 mg/日から 7.5 mg/日へ増量し,ステロイド外用で改善したため TCZ を継続したが皮疹は再燃しなかった。症例 2:65 歳,女性。X-15 年RA を発症した。PSL 20 mg/日,タクロリムス 3 mg/日併用で症状は改善したが,PSL 10 mg/日から 9 mg/日へ減量,インフリキシマブを TCZ に変更 1 カ月後に両下腿に小潰瘍が多発し,急激に拡大した。痂疲を伴う紫斑が散在し,最大 8 cm までの黄白色壊死組織を付す皮膚潰瘍がみられた。生検では表皮内膿疱,真皮浅層に白血球破砕性血管炎を認めた。TCZ を中止し,PSL 50 mg/日に増量し,シクロホスファミドパルスを 6 回施行したところ潰瘍は上皮化し治癒した。自験例はいずれも TCZ 初回投与後に皮膚症状が出現し,病理組織学的に白血球破砕性血管炎を呈した。TCZ は血管炎治療にも用いられるが,今回 TCZ 投与後に血管炎を伴う皮疹が生じたため,paradoxical reaction の可能性を考えた。文献的には TCZ のparadoxical reaction 10 例中 4 例で投与継続可能であり,症例 1 でも投与を継続した。TCZ は RA に有効な薬剤であり,その副作用としての皮疹には十分注意した上で継続可否の判断をすることが重要である。

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