2021 年 83 巻 6 号 p. 531-534
65 歳,男性。顔面から頚部および手指の紅斑と上肢の倦怠感を主訴に当科を受診した。血液検査で CK,LDH の軽度上昇および抗 TIF1-γ 抗体陽性を認め,病理組織学的所見と併せて皮膚筋炎と診断した。造影 CT,上部下部内視鏡で悪性腫瘍を疑う所見はなく,プレドニゾロン 30 mg/日より治療を開始した。紅斑および筋症状は改善したため,5 mg/日まで漸減したが,再燃はなかった。初診から 1 年後,1 カ月あたり 4 kg の体重減少を生じ,造影 CT で多発リンパ節腫脹を認めた。右鎖骨上のリンパ節生検では CD20,CD30 陽性の異型細胞の増殖があり,びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された。血液内科でリツキシマブおよびピラルビシン,シクロホスファミド,ビンクリスチン,プレドニゾロンによる化学療法(R-CHOP)が施行された。この間皮膚筋炎の再燃はなく,4 クール終了後に DLBCL は完全寛解した。皮膚筋炎は高率に悪性腫瘍を合併することが知られているが,特に抗 TIF1-γ 抗体陽性の症例ではリスクが高いため,発症時に悪性腫瘍の存在が指摘できない場合でも,少なくとも 3 年間は血液腫瘍を含めた悪性腫瘍の検索を継続する必要がある。