1999 年 61 巻 5 号 p. 602-605
乳房外Paget病は通常外陰部に好発するが, 稀に多発する事が知られている。これらの中には臨床的に皮疹を認めなくても組織学的にPaget細胞が認められた報告もある。今回, その様な症例を経験したので報告する。症例は66歳男性。11年前より右腋窩に, 7年前より外陰部に皮疹出現。近医受診し外用にて軽快せず, 東京医科大学附属病院皮膚科紹介受診。初診時, 外陰部に9×4.5cmの紅斑と糜爛, 右腋窩に2×1.5cmの紅斑を認めた。左腋窩無疹部を含め生検施行。いずれも表皮内に胞体の明るいPaget細胞が増殖。PAS(+), アルシアンブルー(+)。以上より occult Paget’s disease を伴う triple extramammary Paget’s disease と診断した。リンパ節転移, 内臓悪性腫瘍の合併はなかった。病巣の広範囲切除, 分層植皮術を施行し, 1年2ヵ月後の現在再発を認めていない。文献的に本症の多発例では進行の遅いものが多いが, 少数ながらリンパ節転移例もあり, それに沿った対応をすべきであることをのべ, 発生起源についても私見をのべた。