1988 年 50 巻 5 号 p. 875-878
指尖に生じた単発性グロムス腫瘍の1例を経験し, 電顕的観察およびアミン湿式蛍光法で交感神経の分布を検討した。自験例は, 電顕的には細線維がたいへん豊富でdense bodyもみられ, 分化したグロムス腫瘍であつた。交感神経の分布は腫瘍間質には密に認められたが, 腫瘍実質にはほとんど認められなかつた。この分布は正常のグロムス器官の分布と類似していることや, すでに報告した未分化な単発性グロムス腫瘍の腫瘍実質内への密な分布などと比較検討すると, 腫瘍実質内への交感神経の分布と本腫瘍の分化程度は逆相関するものと考えられた。