1986 年 48 巻 6 号 p. 1088-1093
最近2年間に経験した眼瞼部の悪性腫瘍9例(基底細胞癌4例, 脂腺癌5例)の形成外科的治療について報告した。腫瘍発生部位は上眼瞼, 内眼角部, 外眼角部, 眼瞼全周囲の各2例と下眼瞼1例であり, 眼瞼全周囲のうち1例は耳前部および頸部リンパ節転移をきたした。発生部位により再建法をかえ, 上眼瞼再建には下眼瞼(switch flap), 下眼瞼再建には頬部皮弁(rotation flap), 内眼角再建には前額正中皮弁, 外眼角再建には側頭皮弁, 眼瞼全周囲には額皮弁を利用し, 口腔粘膜移植あるいは鼻中隔の軟骨·粘膜複合移植を裏打ちとして用いた(うち眼球摘出術と眼窩内容除去術を施行した各1例を含む)。いずれも観察期間が短いので予後の検討は十分でないが, 現在まで脂腺癌の1例を除き腫瘍の再発はなく経過良好である。