2020 年 76 巻 2 号 p. I_1099-I_1104
高潮偏差の長期評価を行うことを目標に,台風の潜在強度(MPI)の理論に基づいて熱帯低気圧強度の将来変化について,気候変動予測データをもとに解析を行った.北西太平洋を中心に大規模アンサンブル実験d4PDF/d2PDFのデータを対象に,MPIおよびGCM上の台風強度の将来変化について温暖化シナリオごとの空間分布及び将来変化量の特性について調べた.台風月のMPIと地点上位10%台風強度の間には空間相関がみられ,また海域依存性が強いことがわかった.北西太平洋のMPIの将来変化量を解析した結果,9月に北緯30~40度帯で最大値を取り,その将来変化量は平均的に+2Kで-7.8hPa,+4Kで-16.5hPaであった.これらのことから,高潮偏差等の台風関連の将来変化において,緯度および季節毎の台風の発生頻度,またはMPIに到達する割合を考慮することが重要であることが示された.