2019 年 75 巻 2 号 p. I_1171-I_1176
大阪湾奥に位置する尼崎運河において,環境DNA調査と捕獲調査を比較して運河内スケールにおける環境DNAの有効性と問題点を検討し,各調査地点の魚類相の比較および環境条件との関連を明らかにした.東堀では1月の表層のORPやDOが回復し,同時期の環境DNAにより検出された種数が最も多かった.このことから,この場所が水質の回復によって魚類の利用場所となるポテンシャルを持っている可能性が示唆された.環境DNA調査はより環境の異なる港湾との比較や季節変化については差の検出が可能であった.環境DNA調査は検出は不安定で,検出できない種もあるが,採捕調査よりも多くの魚種を検出する傾向にあり,直接採捕の調査と合わせると互いの調査方法の結果を補い,魚類相全体の把握に有効な手法であると考えられる.