2018 年 74 巻 2 号 p. I_619-I_624
台風の最大潜在強度(MPI)の理論に基づき,気候値から高潮偏差までをシームレスに推定する手法を開発し,気候的最大高潮偏差(MPSSH)の将来変化予測を行った.本手法をCMIP5および大規模アンサンブル気候実験d4PDFの2種類の気候予測結果に適用した結果,高潮偏差予測に対する大気の安定性の影響が明らかになった.特に,SST 変化に対するMPSSH変化の感度は,三大湾の台風シーズン平均で約0.12 m/°Cとなり,SSTの昇温のみを考慮した場合の1/10程度の値となった.また,将来MPSSHは平均および分散ともに大きく増加することが見込まれ,特に9月に大きくなり,その変化量はRCPシナリオが高位になるほど大きくなることがわかった.