平成27年の水防法改正において,高潮により相当な損害が生じる恐れがある海岸を対象に高潮特別警戒水位を設定することが義務付けられたが,実際に高潮特別警戒水位が設定された事例はまだ無い.そこで本論文では,愛知県沿岸を対象として「高潮浸水想定区域図作成の手引きVer. 1.00」に基づく高潮シミュレーションを実施し,シミュレーション結果の潮位時系列から「高潮特別警戒水位の設定要領」に従い高潮特別警戒水位を設定した.設定した水位について名古屋港における過去の潮位観測記録と比較した結果,過去20年間で潮位が高潮特別警戒水位に到達したことは無く,高潮氾濫危険情報の頻発の恐れがない水位となることが分かった.また,高潮のピークと満潮が重なると仮定した場合は約4年に1度の頻度で到達する水位であることを確認した.