鹿児島湾の湾奥西岸に位置する重富干潟では,1990年代後半まで潮干狩りが行われていたが,アサリの漁獲量が次第に減少し,現在では漁獲が禁止されている.このため,本研究では同干潟におけるアサリ資源量の減少要因を明らかにすることを目的とした.
現地調査の結果,アサリの餌料不足が示唆されたことから,同干潟の水質・底質環境を再現するためのボックスモデルとアサリの個体成長モデルを構築した.シミュレーションによる検討の結果,重富干潟におけるアサリの成長は,干潟内の一次生産よりもむしろ沖合の植物プランクトン濃度によって規定されていることが明らかとなった.実際,沖合の植物プランクトン濃度は90年代と比べると2分の1程度に減少しており,このことが重富干潟におけるアサリの資源量減少に影響している可能性が示された.