我が国では,一部地域において高潮ハザードマップが作成されているものの,来襲する台風の規模に応じた高潮浸水計算や避難に必要なリードタイムの検討は十分に行われていない.このため,本研究では,東京湾を対象に気象庁の台風区分に対応する高潮浸水計算と避難に係るリードタイムの試算を行った.
その結果,本研究で設定した想定台風のうち,室戸台風級の中心気圧910hpaの想定台風は気象庁の区分では「非常に強い台風」に該当し,他の区分に該当する台風と比較して浸水範囲が大きいことや,最大旋衡風速半径が大きい想定台風ほど対象海岸から西寄りの経路で潮位偏差が最大となることを確認した.また,避難完了までのリードタイムとして,高潮浸水想定の計算過程で算出される時系列の風速分布を用いて,風速15m/s以上の強風域の到達予定時間を試算した.