2022 年 78 巻 2 号 p. I_43-I_54
大規模災害等では,災害対策本部の運営を中心に,ICS(Incident Command System)における目標管理型災害対応の観点から「定期的な対応計画の作成」「目標の設定と定期的な業務のチェック・改善」の導入が進んでいる.しかし,もう一つの重要な柱である「権限委譲」に関しては様々な事例報告があるものの,その実態に関する議論が不十分である.本稿では,和歌山県における災害事例を対象に,県行政の出先機関への調査等から災害現場における権限委譲の実態と課題を明らかにする.また,権限委譲の課題解決には,地域ステークホルダーと県行政機関との関わり,あるいは現地指揮官による状況判断や意思決定過程を検討する必要がある.そのためには「組織論」によるアプローチのみならず,「組織間関係論」さらには「組織行動論」としてとらえ議論する必要があることを提示する.