2018 年 74 巻 2 号 p. I_779-I_784
2013年11月にフィリピンを襲った台風Haiyanは強風と高潮により,沿岸域に甚大な被害をもたらした.台風常襲国でありながら被害が拡大した一要因として,高潮の理解が不十分で,避難が遅れたことが指摘されている.筆者らが行った調査では,海水が住居に浸水した時点で屋外に逃げ出したため,流れに巻き込まれて犠牲になった住民が少なからずいたことが判明した.事前避難が避難計画の大原則であるが,このように避難を行わない・行えない住民がいる現実を考えると,高潮の住居浸入という極限の状況を想定して避難行動を検証する必要がある.本稿では,台風Haiyanの際に住民がどのような避難行動をとったか,Tacloban市で現地調査を行った.また,高潮浸水と避難行動を同時解析するモデルを構築し,高潮到達時に水平避難を行うことが合理的な選択行動といえるか検証した.