2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_69-67_I_78
いわゆるコミュニティバスのような地域交通を確保するために,バス運営に地域住民が積極的に関与する取り組みが活発になっている.しかし,コミュニティバスは独立採算性に乏しく,運営経費の大部分を市民の租税で補填していることが多い.そのため,当該バスサービスの直接的利得を受けない市民(非受益地域市民)の合意形成を図ることが不可欠であると考える.そこで本稿では,住民主体のバス運営が,1)非受益地域市民の公正感を醸成し,2)公正感の醸成により支払意志額を高め得る,と理論仮説を措定し,この仮説を検証するために仮想市場法(CVM)を援用した心理実験を行った.心理実験は自治体主体と住民主体の2つのシナリオを用意し,それぞれ異なる被験者に回答を依頼した.その結果,本稿の仮説を支持する結果が得られた.