2021 年 77 巻 7 号 p. III_285-III_292
多摩川上流の小河内貯水池流域には,東京都水道局が管理する水道水源林と,民間で所有する民有林が広がっている.ダムを管理する上で大きな懸案事項であるダムの堆砂に対して,民有林では手入れ不足による土砂流出が懸念される一方で,水道水源林には土砂流出防止機能による効果が期待されている.本研究では,水源管理事務所の定期水質調査のデータを基にした長期時系列データを活用し,影響度の大きな事象を抽出した分析を行うことを試みた.具体的には,長期時系列データの散布図の評価に極座標系を用いた新たな評価方法を導入し,データを評価することを試みた.考案した評価指標による分析を行った結果,流量比濁度の割合θの振る舞いから長期的な水道水源林の効果と土砂流出防止に影響を与える森林の状態について,傾斜角度,立木密度,下層植生などが及ぼすと思われる効果を明らかにした.