2021 年 77 巻 7 号 p. III_251-III_260
LC/MSによるノンターゲット分析では試料前処理法として固相抽出がよく採用されるが,固相抽出では試料やカートリッジによって回収率に大きな差があることが知られている.そこで本研究では,東京都神田川の河川水を対象として固相抽出4種と凍結乾燥,試料大容量直接注入について,DOC回収率と質量分析で検出されたDOMコンポーネント数の観点から網羅的分析に適した手法を検討した.DOC回収率が82~92%と固相抽出より高く,検出コンポーネント数が最多だった凍結乾燥が単一の手法として最も優れていると判断した.各試料前処理法で回収される有機物のLCによる保持時間の分布には明確な差があり,コンポーネントの半数以上は単一の手法でのみ検出されたことから,複数の手法の併用によって様々な物性の有機物をより網羅的に検出できる可能性が示された.