2015 年 71 巻 5 号 p. I_357-I_368
現在,東日本大震災を契機とした電力需給のひっ迫や分散型エネルギーシステムへの関心から,ピーク時間をはじめとした時間帯別の電力料金を変動させることで特定の時間帯の電力需要をコントロールするデマンドレスポンス(DR)の導入が進んでいる.本研究は,電力料金の変化と居住者の行動変化の関係をアンケート調査から明らかにするとともに,生活スケジュールモデルを用いてDR制度の導入による都市圏内の夏季エネルギー消費量変化を推計することを目的とする.アンケート調査の結果,1)電力料金が高くなるほどピーク時間帯における外出が増加すること,2)短期的な省エネ行動の促進だけでなく,設備や機器の買い替え・導入など中長期的な行動変化が促進される可能性があることが示唆された.また,アンケート調査の結果を踏まえて名古屋都市圏でDRによるエネルギー消費量削減効果の検証を行った.その結果,3)DRはピーク時間帯のエネルギー消費量の削減効果は大きいものの,日全体での消費量はかえって増加する危険性もはらんでいること,4)単独世帯が多い都心部においては効果が小さくなる可能性があること,が示唆された.