2007 年 63 巻 4 号 p. 338-350
流域環境を生態学的観点から評価する手法を提案した.現地調査から得られた生息域上において数値地図情報と水文モデルの生息環境情報を抽出し,HSI(生息適性指数)を求めた.この指標を用いて,土地利用が変化した場合,気候変動が生じた場合を生物毎に議論した.また,HSIを総合化することから生物多様性を求めた.これらの結果,都市化が止水性水生生物の生息場に強い影響を与えること,オオタカの生息場が生物多様性の高い地域と合致すること,多様性の大きい地域は主に中流域に存在することが理解された.また,これらを総合的に取り扱うことから流域環境を考察した.本手法を用いると流域環境を定量的にかつ分布的に評価することが可能となる.