2001 年 21 巻 9 号 p. 430-433
人工心肺による体外循環中の脳血流・代謝の指標として近赤外分光法による脳内酸素飽和度の測定は有用である.無侵襲モニタといわれるが,長時間のプローブ装着により水疱形成を生じた症例を経験した.症例は,58歳,女性.I型解離性大動脈瘤の診断で上行および弓部大動脈置換術を予定し,22°Cの低体温下で脳分離循環,循環停止を併用して行った.人工心肺離脱と止血が困難で手術時間26時間45分,麻酔時間29時間40分と長時間になった.ICU入室前,発光ダイオードに一致した皮膚の発赤に気づいた.翌日水疱の形成がみられたが,その後,痂皮を形成し1週間で治癒した.術中脳内酸素飽和度が低下し,低酸素脳症が危惧されたが神経学的後遺症は生じなかった.この症例を経験し,熱傷の原因を調べるため低体温下に体外循環を使用したときのプローブ温と周辺環境の温度を測定して比較検討した.結論として低体温による体外循環を用いる場合,INVOSのプローブ装着は経験上同一部位では12時間以内に止めておくのが望ましい.