2018 年 67 巻 2 号 p. 125-
人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:以下,TKA)術後の患者では下肢の腫脹が必発し,術後機能に影響を与える場合がある。本研究では,大腿部腫脹に影響する因子を調査することを目的とした。
2014年10月から2016年12月に,当院において片側TKAを施行された患者86名(年齢:74.2±7.1歳,性別:男性17名;女性69名)を対象とした。検討項目は大腿周囲径の変化率(膝蓋骨直上・直上5 cm 上・10cm 上),年齢,BMI,手術時間,出血量,血液生化学検査(CRP,ALB,D ダイマー),膝関節屈曲可動域(以下,膝屈曲ROM)変化率とし,測定時期は術前,術後7 日目とした。変化率は術後7 日目の測定値/術前の測定値とした。統計処理は周囲径変化率と各項目をSpearman の順位相関係数を用いて検討した。大腿周囲径は術後増加していた(膝蓋骨直上:106.3±8.1%,直上5 cm 上:107.0±7.7%,直上10cm 上:106.3±8.7%)。膝蓋骨直上の周囲径変化率と膝屈曲ROM変化率は負の相関を認めた(r=-0.33,p<0.01)。その他,各項目間に有意な相関は認められなかった。本研究ではTKA術後の大腿部腫脹と膝関節可動域との関連性を認めたが,その他の術中や術後の因子の検索には至らなかった。今後は検索する因子も含めて改めて検討する必要がある。