日本農村医学会雑誌
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山村、農漁村における肺癌および胃癌死亡の症例対照研究
岩崎 二郎海老原 勇内田 昭夫小倉 敬一
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1992 年 41 巻 2 号 p. 92-102

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抄録

静岡県天竜川流域の山村, 千葉県東京湾沿岸の農漁村の死亡を検討したところ, 前者に肺癌, 後者に胃癌死亡が高かった。そこで, この両地域で, 肺癌, 胃癌発生の要因解析を目的として症例対照研究を行った。山村, 農漁村の最近約10年間の肺癌死亡者, 男84人と対照168人, 最近7年間の胃癌死亡者, 男83人, 女39人及びその同数の対照を調査した。対照は, 地域別に, 性, 年齢, 死亡年をマッチさせて選び, 肺癌では, 職業, 喫煙, 胃癌では, 職業, 食習慣 (5項目), 摂取食品 (11種), 飲酒, 喫煙について検討し, 肺癌はMantel-Haenszel法, 胃癌はMcNemar法によってodds比を算出し, 相対危険度を推定した。肺癌では, 農林漁業が有意差をもって低く, 鉱山・炭坑等の鉱物性粉塵暴露作業及び製材・大工等の木材性粉塵暴露作業が有意差をもって高かった。喫煙に関しては, 鉱物性及び木材性粉塵暴露作業との間に協同作用が示唆された。胃癌では, 男の農林漁業が低く, 自営・自由業が高かった。食習慣では,「早食い」が男女ともに高く, 摂取食品では,「魚の干物」の男が高く,「淡色野菜」の女が低かったが, 飲酒, 喫煙では関連が認められなかった。食習慣, 飲酒, 喫煙についてロジスティック回帰を適用すると, 男で「早食い」が有意に関連していた。

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