日本臨床免疫学会会誌
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症例報告
アデノウイルス胃腸炎とマイコプラズマ肺炎に続発したループスアンチコアグラント陽性・低プロトロンビン血症
清水 武石黒 精高柳 隆章松井 猛彦利根川 尚也前川 貴伸板橋 家頭夫
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2014 年 37 巻 1 号 p. 55-60

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抄録

  ループスアンチコアグラント(LA)は小児において感染に伴い一過性に産生され,凝固異常をおこすことがある.特にLA陽性で低プロトロンビン血症を伴うループスアンチコアグラント陽性・低プロトロンビン血症(lupus anticoagulant-hypoprothrombinemia syndrome: LAHPS)では出血症状を示す.マイコプラズマ感染症の肺外病変として抗リン脂質抗体症候群による血栓症や一過性のLA産生を認めることがあるがLAHPSの報告はない.症例は9歳,女児.発熱,咳嗽と両側下腿の紫斑を認めた.先行するアデノウイルス胃腸炎にマイコプラズマ肺炎が続発し,紫斑は内因系と外因系の凝固異常が原因であった.クロスミキシングテストはインヒビターパターンを認め,凝固因子活性は広範に低下,低補体血症と複数の抗リン脂質抗体価(LA,抗カルジオリビン抗体,ホスファチジルセリン依存性抗プロトンビン抗体)の上昇を認めた.ミノサイクリン投与とLAHPSに対して無治療で経過観察した.出血症状は速やかに軽快し,発症1か月後に凝固異常は改善した.本症例では複数の感染症と抗リン脂質抗体産生がLAHPSの発症に関与したと考えられた.

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© 2014 日本臨床免疫学会
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